帰還困難地区 長泥の 地区長 鴫原良友さんからのお話
終始 ユーモアあふれた 温かな 語り口
しかし それは 深く重い 悲しみと怒りとやるせなさを 越えて 前だけを向いて ゆこうと 思い改めた日々の裏付けがあってこそのこと
そんな 貴重な 体験を 軽やかに受け渡してくださることに
おののき震えながら
しかし 思わず 笑いながら おうかがいした
わたくしの 薄浅い 感想や 解釈や
鼻くそみたいな 比喩で 歪曲してしまうのは失礼すぎる
受け渡し伝えるときに ついついさしはさんでしまう「余計なもの」を 省きたくて
いただいたことばは なるべく そのまんま かぎかっこ「」で お伝えしたい
「話上手なわけじゃねぇんだげんとも」と 照れながら
しかし「言わねぇと わかんねぇことだから 今もずっと続いてること わかってもらいでぇがら」と しんみりしたかと思うと
「んで マイク持つと 五~六時間は とまんねえで 喋っつまうんだぁ」と 笑う
震災後 すぐに 浪江 大熊 双葉からの 1200人を越える 避難してこられた方々の 受け入れ助太刀に 炊き出しをし続けた 鴫原さん
自衛隊の方々も たくさん来てくれた と心強い思いでおられた
しかし 15日になって 飯舘村の 放射能汚染を 知らされ 愕然とする
「知らずに 炊き出しして 内部被爆したんだべな させてしまったんだな…て 悔やんでも悔やみきれねぇがった」
「あんなにいた自衛隊の人たちも すぐにいねぐなっつまった…代わりに 防護服の人らが 来たのさ」
避難所は すぐさま閉鎖され 避難してきた人たちは 別のところへ
22日に 全村避難となった 飯舘村は
遅れをとったために すぐに 避難所に 入ることができず
まず 250名が 財務相の建物に 避難できた…とか
馬と牛を 育てる農家であった 鴫原さんの 共に暮らした 牛たちは
「手足をもがれる思い」で 手放した…と
しばし 言い淀む 鴫原さん
「『マスクしないでも 大丈夫』なんつって 安部…来たけど 冗談じゃねぇのさ。大丈夫だの コントロールできてんのいうなら 放射能あっとごで 会議してから物言えっつうの。埋め立てに使えるっつうなら 霞ヶ関さ 使えばいいのさ 汚染土」
笑いながら しかし 静かな怒りがにじむ
「もとに戻らねぇ 放射能なくならないとこにいて 忘れたいけど忘れらんねぇならば 引き受けて生きていくしかねぇのさ」
環境省が フレコンバッグの処理施設や 再生事業を始める
ハウスのなかでの 飼料植物を育てはじめているのは
「見せかけでしかねぇ ままごとみでえなもんだ」
「土のことに関しての エキスパート農水省でねくて 環境省がやってるのが 何より 環境が駄目なまんまっつうごどなのさ」
汚染土を 深く埋めた上に 防護シートで 塞いで 汚染されていない土を被せて 農業する試みには 国内外からの 非難が 集まっている
「その事に 何で賛成したんだって言われても 賛成しねぇと 他の支援しねぇぞっつう 取引みたいな 脅しみたいなやり取りはあるんだ。苦渋の選択なんだ。たくさんの 判子ついたあとに こっつさ 伝えられるだけだがら 市井のものの意見なんて いちいち聞いてらんねぇのさ」
「批判して反対すんのは 楽だげんとも んでは 反対する人らは たくさんあってなぐなんねぇ 汚染土を どうすっか 具体的に なんかできんのかっつうの…誰かが引き受けなくてなんねぇのさ…どうやったら助けてもらえるか 考えながら 反対したり 受け入れたりしてんだ 俺たちは」
被災した身の上にさえ 批判や非難が ふりかかっておられるとは
かといって そんな声に 怒りをぶつけるつもりはない
「『までい』つうのは 丁寧にだけでなぐ、相手のこと ちょこっとでもいいから 思いやるのさ。国のやり方に対してもさ」と
取引のようなことを 言ってくる 国に対しても までいに 向き合っておられる
「震災後 後悔しない生き方とか 生き甲斐について 考えるようになったんだ。今まで育ててくれた父ちゃん母ちゃんありがとう て 感謝して 思いやりとか ありがとう つう 感謝の心をもっていかねばな」
「現場に来て 見てもらいたい 楽しんでもらいたい 」と 願っている
まだ戻れない 戻らない それぞれバラバラに 暮らしておられる 長泥地区の人たちは 0歳から 九十代まで
飯坂温泉などで 定期総会をひらきながら
またいつか ふるさとに 戻れることを 夢見ている
「解体したり よけた草とか 燃やさんねぇんだげんとも 気休めの マスクしながら 片付け行ったりしてるんだ」
これが 八年経った今
それでも 前を
希望の光へと 眼差しを向けて 暮らしておられる
「今まで 俺が どっかで話すっとしても 出て来ねがった かあちゃん…今日はじめて 来てくれたんだ」と
照れながら しかし うれしそうに お連れ合いを紹介なさった
「ほんと 感謝してる ありがでぇ…」と しみじみと お しゃった
受け取り 活かして 生きている
「までい」なる ありかたを みせていただきましたる
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