ちょっと 暖かな そこでは
もう 岩南天も 花びらが散って
まるい実をつけていた
これ いい匂いなんだよね て 言ったら
そっけなく受け流すか
ものしりのふりをするかと思えば
へぇ て
迂闊にも 素直さ 剥き出しだったもんだから
こんど 一緒に くんくんしよう なんて
こどもの約束みたいに
遠ざかる 大きな背中の鎧の奥にある
震える子犬みたいな おまえに 放ってみる
たまには 出ておいでよ
滞ったら 日向ぼっこしようよ
また 土の道を 歩こうね~
振り向かなくても 笑って見送った
そうして 未だ岩南天の咲く 森へと 帰ってきたんだ