うけとるから

風が 気持ちよくて

人の やさしさが うれしくて

なんとなく わらいながら なきそうな気分で

風に吹かれるままに

仕事とは 反対方向へ

…もちろん まだ 時間的余裕ある と 頭のどこかで ちゃんと はかっていたからなのだけど…

何故か 野蒜海岸

工事まだまだ 終わらず

どこからのぼっていいかわからず

足掛かりも無さそうな コンクリート斜面を

ぞ ぞ ぞ と ずり滑りそうになりながら 雪駄でのぼる

出られた

砂浜だ

五年前のあの日

流されてまた

流れ着いた 砂浜だ

ここに来るといつも思うのは

いろんなものが 流されて砕かれて晒されて

行き着くところのようでもあるなぁ てこと

貝殻も 流木も

どこの浜辺よりも 細かく 角がとれてしまって

もとの 輪郭が ゆるんで とけだしてしまうよう

そんななか 珍しく 巻き貝の 名残をとどめている貝殻があって

手を伸ばした

遠いと思っていた 波の裾が 足元を 払うように 寄せて

返していった

手前勝手な つまらぬ 感傷など  

嘲笑うように…

左足だけ ずぶ濡れ

しばし 乾くまで

じりじり焼けた 砂浜を さ迷い歩く

なにか 受け取ったわけではないのだけれど

いつか 聴こえてくるかもしれないよ…という 囁きのようなものが 浮かんで

流木

胡桃

貝殻の破片

石を

拾った

入れそうにない場所なのに

波乗りに 興じる人がいた

取り戻しているのか

取り戻せないけれど すすんでゆくのか

それぞれの 心持ち 思い馳せきれぬくせに

でも それぞれで 生きていこうねっ なんて

能天気を 恐れず 言ってみる

形が変わったとしても

物質保存の法則で

すべてあるのだ

かえってきているのだ

ここにある

ここにいる

うけとるから

かえってきてくれよ と

狭間 繋ぐもの?

なにか 思い出しそうになりながら

また ぞ ぞ ぞ と 来た坂を 戻りのぼり

おりた

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