月のお伽

おいで と 伸ばしてくれた手は

この手を 握り続けるためではなかった

ひょいと掬い上げて

気づけば 

まだまだ ずっと先の方で

あたふた追いかけながらも

目に留まった 茸や 虫を追いかけてしまい

よりみちみちくさ 草ぐさに まみれて

はた と 気づいて 顔をあげると

「そう来ると思ったよ」なんて

少し先の 草むらに 

おんなじように 寝転んでて

出し抜こうかと 思いきや

もう 次の 何かへ 駆け出したりもしてる

また 見えるのは 背中ばかりだ

ずるいよ

もう構うもんか と 

頓着せぬ風に ゆくと

「おぉ こんなところもあったんだね」 なんて

後ろから 追いかけてきたりもして…

なんだろう

前にもあった 感覚だ

生まれ変わりなど 信じないけれど

かつて 寄りそうでなく

それぞれにゆきながら 

時折まじわる 曲線を描く 宙の 石礫

もしくは 野をゆくものたちで

今は そんな風に また この地の上をゆくのかもしれない

そんな 脈絡ないようで

妙に納得してしまう 夢を見た

…ほんとうに 夢だったのか?

顔をあげたら

月が そこにあった

月が見せた お伽 ひとつ

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