この足で踏めるところへ

海辺へいったとて

なにかをおさめられるわけではない

せいぜい 己の中の 波立ちくらいであろう

むかし 見知っていた 食べ物やさんの ご主人が

震災のとき

お店にいて

おうちとご家族を すべて 流されてしまったこと

その後 気持ちの回復を 果たせぬまま

最近 自ら 生きることを 絶ちきってしまったこと

出来事の 結果を 聞くしかできない 自分

なにもできないままに

また 明日へと流れてゆくのだろう

それでも また 思う

ぬぐいされないかなしみがあるのだとしたら

ぬぐいさるのではなく

あたらしく 哀しみが貼り付かないよう

どこかで なるべく哀しみが生まれないように

やわらかに 笑っていられるように

そこへつなぐ 藁しべのような 糸口を なにか せめて…

そんなことを 胸に浮かばせて

この足の 踏めるところへと 向かう

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