かつてあった奇跡

七月二日

母のすぐしたの妹「たえこちゃん」の 命日

三歳そこそこで

逝ってしまった 人

関係としては わたくしの おばちゃんに当たるのだけれど

おばちゃんと呼ぶには 幼い 苺のシールに 縁取られた 肖像写真

しかし 幼い割には 大人びた表情の 「たえこちゃん」

この写真のとき 既に 病状よろしくなかった故の 表情だったらしい

苺が大好きで

病床にて「苺が食べたよぅ」と 言い続け

じいちゃん実家 丸森の 森 本家の 「ねえや」さん「女中」さん「こづかいさん」やら 働きに来ていた人たちが 手分けして あちこち 農家さんめぐって 探してくれた

結局 亘理の農家さんとこに 奇跡的に あって

それを食べてすぐ 亡くなったというはなし

くりかえしくりかえし ばあちゃんは 話していた

ずっと 幼いまんまで

「めんこくて」

「もぞこくて」(いぢらしいく 不憫であるような意味合い)と

嫉妬してしまうような思いも 浮かびながら その話を聞いていた

あんなに 次から次へと 鈴なりになっていた 苺は

6月下旬にはいる頃 ふっつりと 実りの時期が 終わる

毎年 命日には

苺のお菓子で お茶を濁すか

苺の乗ったケーキにするか…だったものの

今年は 奇跡的に 一粒だけ 実り残っていた

70数年前ならば ハウスの技術開発も まだまだであったろうから

苺が あったことは もっと 奇跡的だったのだろうな

そんなことをまた 繰り返し思う日だった

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