泳ぐように 紙の魚

かつて しゅるしゅる虫 と 呼んでいた

泳ぐように 這う

紙の魚 と書く 紙魚(しみ)

好きな虫

二十代の頃

心も立ち位置も 定まらぬ 今より 鬱々もやもやとしていた頃

温い泥に 仰向いて 耳まで 浸かっているような感じで

何をするでもなく いた 真夜中

ふと 目の端に 何かが動くのを捉え

見やると これがおったのだった

捕まえようとしたら

キラキラ銀の粉だけを 手元に残して

すり抜けていった

まだ 名前(人がつけただけのものだけど)も知らなくて

でも 何かよくわからないけど 慰められるような 思いにもなって

そこから 少しずつ  停滞から 動き出したのだった

そんな日のことを思い出しながら

また きっと と 思い改める 朝

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