枕の中を 歩く人

昔から あまり 眠りと 仲良しではなかったけど
ここ数日の熱帯夜で  更に 仲良くなれず
幼い頃も なんとか 眠りの仲間に入ろうと 四苦八苦していたっけなあ 
今は 眠れぬとて 横になっていることも休息・・・と 自分にいいきかせて
なるべく焦らず 深いこと考えぬように ゆるんと 水の中に 漂うようにいる
・・・のだけど 三日も 続くとさすがに ううう もすこし 眠れ~と 自分とんとんしてみる
かつて 眠れずにあれこれ 寝返りを打っていたとき
ふと 枕に耳を押し当てるようにしてしばらくすると
ざ ざ ざ と 砂利を踏みしめるような音
じいちゃんが 歩く早さに似ていて てっきり うちのじいちゃんか 誰かがこちらへ やってくるのかと思った
あれ?でももう みんなうちにいるはずなのに・・・と そのまま耳を澄ましていた
「足音」は 近づくでも 遠ざかるでもなく ゆっくりと 同じ速度で
ざ ざ ざ ざ ざ・・・と 踏みしめ続ける
少し怖くなって 反対を向いても ざ ざ ざ ・・・
そのうち 身を縮めるようにしたまま 眠りに落ちた。
しばらく 夜眠る時 その「枕の中を歩く人」が どこから来てどこへ行くのだろうか
と こわいながらも おそるおそる 様子をうかがっていた
ほどなくして それが 自分の心音であることに気付いたのだけれど
かえってそれで 怖さは 消えて
眠る前にやってくる 砂利踏みおぢさん と 親しい気持ちで
足音=心音を 聞いていた。
寝返りをたくさん打ったり 動いた後は おぢさんが 早足になることも 面白かった
そんなこと 思ってたっけなあ・・・と 枕に 耳を押し当ててみたけれど
今は その足音さえ 遠ざかってしまったようだ わたくしの 耳よ
でも しばらくしたら はるか 彼方に さく さく と ゆきを踏むような 気配
ああ そんなところまで 歩いていったのだね・・・なんて
懐かしいような 寂しいおもいに 枕が濡れた
おぢさんのおかげで 少し 眠れたようだ

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