歌えなかった歌 色気編?

以前 とある 合唱団の助っ人を頼まれて 練習に参加した。
その場で 楽譜をいただいて 初見で歌う・・・とはいえ
かなり 難しいものだったので、パート練習の待ち時間に
ざっと 詩を読んで 譜を追った・・・らば
足元から ざわざわと 這ひ登りしものあり なんだこりゃ!?
で、歌い始めたら もっと ぞぞぞぞ・・・と からだのなかに こみあげるものあり
知らず 涙目になってるわたくしに「どうしたの?具合悪いの?」と 心配してくださる メンバーの方
困った 訳わからん。わからんからこそ 困った
村松英子 詩/三好 晃 曲「女声合唱とピアノのための 三つの夜想」の「ある肖像」という歌だった。
女優である 村松さんの名前は 舞台関係の話や 三島由紀夫の作品に絡むなにかの中で 見聞きしたことはあったけど、よくは知らなんだ。
三好さんは、高校生の時の合唱で ちょこちょこ歌ってた。
「三好アクセント」なんて独特の言葉もあったくらい 難解な楽曲といわれていて 散々苦労した上、コンクールの時の審査員であったご本人に 講評でみそくそに言われましたっけね 角田女子高・・・ちっ。
河合の音楽講師してた時 作曲者によるテキスト公開レッスンに 三好さんがいらっしゃり、何故か わたくし演奏モデルの1人として 参加することになったのだけど、ずば抜けて へたくそな わたくしの演奏を聴いて「なぜここまで ひどい弾き方できる人がここにいるかわからない」てなこといって ため息つかれちゃいました。作品冒涜してすみません なんて ちぢこまったっけな。 
横道それまくり・・・ま、そんなくらい あまり いい思い出がなかった 三好さんではありますが、
この「ある肖像」 言葉と音楽が 渾然一体となって 渦巻くように濃密な世界観を作り上げてる様に うぶなわたくし 酔いが回ってしまったような感じ。
馬鹿みたいですが へたりこんで 早退してしまいました・・・なんで 練習中に翻弄されてっかな。
~ 私は知っている
緑色の眼をした仔狐よ
おまえは ずっと昔
古びた館に住んでいた
サテンの花や
兎の舌が好物の
贅沢ないきもの ~
ここまで読んだって なんら琴線に引っかかることもないのに
歌にすると 最後の
~ 私はもう おまえに飽きているのだけれど
おまえの臆病な眼の中の
そのみどりの炎が
忘れさせる
私に ことばを
もう あの古びた館におかえり という・・・・・・ ~
つうとこまで 涙目涙声になって たどり着けぬのであった 不思議。
詩の内容が 身に覚えあるほど ご立派な経験などないわたくしですが
何かに引き寄せて 何かを呼び覚ましたことだけは確か。
で、結局 うろたえたまま歌えず 助っ人辞退してしまった体たらく。
謎の一端でもいいから 明らかに ならんもんか・・・と 
その頃丁度 目白の椿山荘近くで 村松さんが サロン劇なさる と知って 行ってみた。
お屋敷のふかふかな椅子に座っていたらば 
釣鐘型のドレスをおめしになった 村松さんたち・・・「おほほほ ご冗談はおやめになって」・・・な感じで ご登場
目の前に繰り広げられる サロンのなかの事件をめぐる かけひき わわわわわ 別世界。
これみてから 歌に挑んだら くだらん自意識への引き寄せなんてせずに
冷静に歌えたかも・・・と 少し残念。
でも 思わず知らず 自分の中に 思い起こさせた 倦怠を伴う 隠微な世界への共鳴ってもんが 面白くはあったな。
映画『オブローモフの生涯より』を も少し鮮やかにしたような感じ・・・伝わりませんね すみません。
リンク集にもある ままやさんが 森茉莉さんの作品を題材にして 作られた 箱物オブジェをみたとき 
真っ先に 喪失感のような色気と 『ある肖像』の 歌に翻弄された時の気持の揺らぎを
思い出したのでした。
わたくしの ちっぽけな 感傷はさておき、歌も 作品も ほんと 素敵だす。
そのうち そういうものを 合体させて なんかの形にできたらいいいな。 

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