『バスラーの白い空から』

『バスラーの白い空から』佐野英二郎 著(青土社)

読み終えた

須賀敦子さんの『本に読まれて』(中公文庫)で 知った本

一昨年 注文したときは 「購入できません」本だった

昨年 新装版となって よみがえり

入手叶ったもの

世に出てやろう という 書き手さんではなかったらしい

すべて つまびらかにするわけではない「抑制」された 筆致

しかし 思わせ振りの嫌らしさではなくて

書かないことにより その奥行きを

想像と 共感の余地を くれる

波乱の日々の ぎざぎざや とげとげが あったはずのあたりを

ていねいにていねいに 鑢がけして

磨いて撫でて

誰をも傷つけることなく

人の

ことの

かつて あった ひとときを 受け渡してくれる

「紳士」という 言葉を思う

波瀾万丈の…というより

それらを越えてきたひとが

しずかに 語る

言葉少なではあるけれど

時に 輝く比喩のまま 語らずにいてくださることに ゆらりゆるりと 漂う

思っていたより ずっと以前の出来事

敵対していたはずの 国の人

失われた国からの人

しかし それらを 掲げず 出会う 人と人との 時間

記すことが いつの日か 誰かの救いにもなるのだなぁ と 思う

著者の 没後

「彼の文章を 本にしたい」と 思い立った ご友人 中村稔さん

出版に 関わる方々

そしてこの 書評を「是非読みたい」と思わせてくださった 須賀敦子さん

ありがとうございます と

救われたものの一人として

深々と頭を 下げる思い

コメントをどうぞ