描いてゆく

砂に 描かれた

荒波に 浚われそうな 石塊の

そこにいた 証の 

水流の 分かれて 乱されたる 跡を

わたくしは 見たのだ

確かに

すぐに また 消されてしまう その紋様であったとしても

目と 心に 留めて 思う

流されても

浚われても

大きな流れに 幾ばくかの 揺らぎを起こせる という ことを

己の仕業を 見ることが 叶わないとしても

描かれるであろう事実はあるのだ という 心強さを

二度と触れることのない 石塊の あなたに

救われた日があったことを 忘れない

あなたの形を 忘れ去ったとしても

あの日が 今につなげてくれたいのちを

生きてゆくのだ

生きて 描いてゆくことが

あったことの 証として…

コメントをどうぞ