手を離せ

一筋の明かりも 入り込まない

闇の中で 目を凝らす

もわりと 浮かぶは

最後に見た 光の残像

それは 微笑みであったのか

もしくは せいせいと 去る 背中であったか

やがてそれが 網膜のあたりの

血の流れの 律動にそって

びくり びくりと 揺れ動く

それでどうしようというのだ?

何万回も 問いかけてきた気がすることばが

ぼこりと 腐敗臭とともに はじける

受け止める相手のいない言葉は

実態のない

脳細胞の中の 電気反応でしかない

かなしみさえそうなのだ

過ぎ去ったことなど もう どうでもいいだろう

それが 愛であったとしても

憎しみさえ生んだ 冷ややかさでも
 
そこにしがみつく 思いの手を離すのだ

今 手にするために

今 という 唯一の 在を 手にし続けるために

今いる相手に 届けるために

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