愛しさの迷宮

愛しい お前

その目 とらえたくて

追う

求める

皮膚の境界線 越えて

ひとつになりたいと 

乞う

願う

お前を 呑み込んでしまえたら

何をするにも ひとつだ

やることなすこと見るものすべて 重なる

お前は わたくしで

わたくしが お前になるのだ

なんと 完全

なんと 甘美 

そんな想いに 酔いしれながら

お前を呑み込んだ

しかし 気づく

ひとつであるのは

お前が見えぬということ

お前を追い求めた わたくしの目は 

お前自身のものとなり
 
乞い願う 渇望 という 甘美を 失った

完全であるという 失望

そして わたくしは お前であることを やめた

お前であるという 視点が 引き剥がされた この目 の 欠落感

しかし よみがえる 追求 

甘美

愛しいものと ひとつになりたい なれない ならない なりたくない 愛しいまま求めていたい…

求めながら 求めきらずにいる

欠落と 矛盾の歪みを いだく

愛しさの 迷宮

眼孔の 虚に

かつて 求めるために てばなした お前がいたのだ

鏡の 奥から

瞬く いとまに

甦った 遠い日の 記憶

コメントをどうぞ