ありがたいことをひとつひとつ

父の 変調の はじめの症状は

デイサービスでの ときどきのお楽しみ 将棋指しの時

駒がつかめない ということだった

しかしそれは 二時間ぐらいで 元に戻ったようで

「軽い血栓が 運良く 流れた」と 解釈してしまいたくなるのは 当然で

父本人も「気分悪いわけでもないし」と

ちょっとした 体調不良 と 誰もが 思った

思いたかっただけなのだ

「右目が変」と 気づいたのは 飛び込みで 問診診察から帰ったその夜

そういや 朝から 右目の目やに ひどかったよね とか

歩くのや 座ってから立ち上がるのが 困難なのは

「今日一日 デイサービスから 診察までもあって 疲れた」のだろう と みんなで 解釈してしまい

しかも 翌朝 自分の 力で立ち上がれて

でも 目のせいで 右側に 片寄って歩いてしまってて

それでも 横から もっと右 やら 左にも少し…と ガイドしたら

自分でなんとか 工夫して 歩行器を がしゃんこがしゃんこ すすめてた

このあたり 脳梗塞は じわりと すすんでいたのでしょう

いちど 駄目になった 脳細胞は 元には戻らないというに

驚異の回復力なのか

はたまた 驚異の 引き継ぎ力なのか(別の脳細胞に 経験を引き継ぐとかいうやつ)

診断判断を 見誤らせる 有り様 父

入院翌日行ったら

ここがどこなのか?てのが はっきりしてなくて

中核だよ と 伝えたら

「そうか」と 少しほっとしたようで

「殺す気か」て 言ったことは ぼんやりしてて

おにぎりを食べたことは 覚えてるけど

どら焼きは「記憶にない」とな

証拠写真見せて ほれ 食べとる…しかし 半分しか 渡さなかったから「食った気(け)ねぇ」と 思ったんでないの?と 言ったら

ふはは と 笑った

いろんなことを 忘れずにいよう と している 父としては

良く覚えていないことは ショックだったりするかも と 心配したけど

「今日は何曜日だ?金曜なら おかさんも おにいちゃんも 休みで 家さいるんだな」と

確認するみたいに言ってた

どんなんでも いいんだよ

生き繋いでくれてありがとうね

ありがたい あることを ひとつひとつ 拾って ゆく

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