今だからこそ の 一冊

もんやりとした雲が

のろり と 動いて 青空を覗かせて

蒸し暑さが ぐいぐいと 坂をのぼるような 頃合い

ちっとも 急いで行くつもりなどないような 電車 阿武隈急行線に 乗った

南下する お伴には

先日 受け取った『線量計と奥の細道』ドリアン助川 著(幻戯書房)携えて…

受け取ってすぐに ちょいとは めくってみたのだけど

すこぅし 手が震えるような思い 湧きあがった

忘れ去っていると思っていた思いが

未だに 蓋をされただけで

おさまりつかなく あったのだ

鈍磨というわけではなかった 狼狽えと 安堵と ないまぜ

震災の翌年に 線量計をもって 自転車に乗り 芭蕉の道程を辿って

んでもってちょいと 奥の寄り道 角田にも たずねてくださった

「オリンピックへ向かう景気の陰で見えにくい存在になりつつある」被災のこと

原発のこと

「恣意的な忘却ではないのか」と

危惧しつつも

今なお その場所で暮らし続ける人たちへの 不安を煽ることにはならないか と 迷い

それでも 心寄せてゆこうと

揺れっぷりもそのままに 書き記してくれたもの

助さんならではの 身覚えのある 感覚をよみがえらせてくれる しなやか痛快な 書きっぷり

今更 ではない

今だからこそ の

待望の 一冊

みんなも読んでくれろ

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