じいちゃんの すぱめっぴ

幼い頃 スパゲッティーといえば
ビニール袋に うどんみたいな麺と 橙色の粉(ナポリタンの素)がはいったやつ
よくお昼ご飯に ばあちゃんが作ってくれていた
スパゲッティーと うまく発音できず しばらく「すぱめっぴ」と 言っていたっけ
んで あるとき わたくしのほかに 家に誰もいない土曜日
じいちゃんだけが 早く帰ってきたので
真っ黒い鉄のフライパンで ちゃちゃちゃっと作ってくれた
いつも食べているものよりも 若干 ワイルドな ハムの切り具合
ちょっとこげもあって
二人で食べる・・・なんて ちょっとないことも すべて 特別で
ああ じいちゃんのすぱめっぴは美味い~と 思った
それ以後 ずっと 「うちはみんな料理上手で じいちゃんは すぱめっぴがうまいんだよ」と 自慢していた
んがしかし 家族は「じいちゃんが料理するわけない 夢でも見たんでねえの」と 信じてくれなかった 
長じてから「パスタ」なんて こじゃれた名前で呼ぶようになったり
アルデンテなんて 妙な 通ぶった調理法に慣れて
美味いと 思うようになっても
あの日のじいちゃんの すぱめっぴほど 特別感は ない
同じもので作っても きっと味が違うんだろうな
あのときの 調味料材料 そして状況 すべてが 味付けになっていたんだものね

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